ステロイドは怖い?アトピー歴40年の私のステロイドとの付き合い方

ステロイドを塗るのが怖いですか?
副作用を気にして使うことを躊躇する人もいるでしょう。
実は筆者も生後すぐ、アトピー性皮膚炎と診断され、早40年。ステロイド歴も長いベテランです。
「ステロイドを使ってみたい。けれど本当に大丈夫なのだろうか?」ステロイド治療に不安を抱くあなたに向けて、ステロイド治療の経験、思いを語ります。
怖い」と思ったことがあります。それでも、今も使っています。
どうして私がステロイドを使い続けているのか、その理由を知ってみませんか?
ステロイドの効果や副作用に関する正しい知識をもって、あなたの治療に役立つことができれば幸いです。
ステロイドの効果とは?恐れられている副作用について
あなたはステロイドについて、どこまで知っていますか?
ステロイド(ステロイド外用剤)は湿疹、アトピー性皮膚炎、皮膚の炎症を鎮める効果がある
薬です。
しかし、切れ味の鋭い効果がある一方、使い方の難しい薬で、長期連用、誤った使い方をすると皮膚の萎縮、毛細血管の拡張といった副作用の心配があります。
「ステロイドが怖い、危ない薬だ」と恐れられているのはこの点です。
【私のステロイド体験談】間違えた使い方
筆者とステロイドとの出会いは赤ちゃんの頃。母が病院で処方された薬を使ったのが始まりです。
今から40年以上前のことですから、現代のようににステロイドの副作用が問題になっていませんでした。
アトピーは、幼い私と痒みとの戦いです。
私は物心がついた頃から自分でステロイドを塗っていました。
塗ると痒みが飛んでいき、次の日には赤みが引く。
ステロイドはアトピーの痒みで苦しむ、幼ない私にとって『魔法の薬』のようでした。
夜はぐっすり眠れるよう、痒みで起きてしまわないよう、寝る前にベタベタと塗っていたことを覚えています。
「なんてよく効く塗り薬なんだろう……」
子供ながらにステロイドの効果を痛感すると同時に、その万能さに怖さを感じていました。
そんな私も、高校生になると一人で皮膚科に通うようになりました。
医師から「ステロイドは使い過ぎないでね。薄く塗ってね」そう念を押さるようになったのです。
当時の軟膏には薬の名前が書かれておらず、私はステロイドという名前も知りませんでした。
「何色のキャップの薬がなくなったから下さい」そんな風に伝えていたのです。
もちろん、現在のようにネットがあるわけでもないので、薬のこと、副作用のこと、詳しく知ろうとしませんでした。
自分の身体のことなのに。ステロイドに対して、あまりにも無知だったことを実感したのです。
私がステロイドの副作用に気づいた日
私のアトピー性皮膚炎の症状は全身でした。その中でも一番ひどいのは顔と首です。。
とくに首は服の襟が触れるだけでも痒く、赤くただれたようになっていました。
見える場所なので、人目を気にしてステロイドを大量に使っていたのです。。
実はステロイドには強さがあります。現在は5ランクに分かれており、症状と部位に応じて適切なランクのステロイドが処方されます。
理由は、身体の部位によってステロドの吸収率が違うからです。
顔は皮膚が薄いため、ステロイドの吸収率が高く、弱いランクのステロイドが処方されていました。
しかし、私は首には身体用のステロイドを使っていたのです。後から知りましたが、首も顔同様に、ステロイドの吸収率が高いのです。
ステロイド吸収率の違いをわりやすくたとえるならば、腕に塗布するステロイドを首に使用した場合、その吸収率は腕の約6倍となるのです。。
20歳を過ぎた頃、鏡にうつる首の皮膚が、薄く血管が浮き出ていることに気づきました。
それでも、当時の私は「体質、色が白いからだ」と気にしていなかったのです。
ちょうどその頃、テレビでステロイドの話題をやっていました。
何気なく見ていたのですが、テレビに映った軟膏は見覚えのあるものでした。そう、私が長年愛用してきた軟膏だったからです。
テレビではステロイドを「悪魔の薬」とたとえられており、その言葉に眠れない夜を過ごしました。
脱ステロイドの開始と挫折
「ステロイドは悪魔の薬なのでは……」不安がぬぐいきれない私は、通院していた皮膚科の医師に首の症状を尋ねました。
結果は皮膚の萎縮と毛細血管の拡張。そうステロイドの副作用です。
私が使い方を誤ったために起きた副作用ですね。非ステロイドの軟膏と保湿剤のみに切り替わりました。
しかし、皮膚の症状は抑えきれません。どんどん悪化していきました。
赤くただれ浸出液が流れます。その範囲がどんどん広がっていきました。
これがステロイドのリバウンドです。今までにない猛烈な痒さが襲いました。
皮膚がつっぱり痛く、身体を動かすことが苦痛でした。
眠れず、今までの日常生活が送れなくなりました。
脱ステロイドは失敗?セカンドオピニオンへ受診する
セカンドオピニオンを求め、有名な皮膚科に行きました。
ステロイド以外の外用薬、飲み薬を次々に試したり、民間療法を行ってみたりしましたが、、どれも、すぐには効果があらわれません。
肌だけではなく、心が壊れていくような感覚に襲われました。
その頃の私は会社を辞め、恋人にも会えず、家に引きこもる毎日を送っていました。
「もう限界……。」
私が普通に生きていくためには、ステロイドしかないのでは?と思い始めたのです。
ステロイドの再開とコントロール
新しい病院で、医師の指導のもとステロイドを使い始めました。
最初のうちだけ、1日1回少し強めのステロイドを思い切って使う。
その後は弱いランクに変更。さらに薄めたステロイドに変えていくという使用方法です。
私は身体の部位に応じて使い分けました。
こまめに通院し、医師に相談して、自分の肌の状態に適したステロイドの使い方を指導していただいたのです。
どうしても、季節、環境、体調などにより症状が悪化する時期があります。
その時は早めに相談し、一時的に炎症を鎮めるため、対処の仕方を覚えました。
その後、仕事もできるようになり、恋愛、結婚、出産もしました。
「悪魔の薬」と言われたステロイドのおかげで、快適な生活を手に入れたのです。
皮膚の薄さや浮き出た血管は気にならなくなるほど回復しました。
その後はステロイドの副作用は出ていません。
「悪魔の薬」と言われ、もうステロイドを使いたくないと思った私ですが、本当の悪魔は『正しい知識を持たずに薬を使用しないこと』だったのです。
ステロイドを使う場合に必要なこと
今は調べることができる時代です。
自分の欲しい情報を手にれられますし、同じような悩みをもった人の体験談を目にすることだってできます。しかし、その情報の中には、誤った情報も多くの飛びかっています。
とくにステロイドに関しては、さまざまな治療法、情報が存在しますが、その中から、医学的に確証がある正しい知識を得て下さい。
そして、人それぞれ症状も体質も環境も異なるからこそ、ステロイド治療に「これが絶対的に正しい方法だ」と言い切れるものはありません。
-
- ステロイドのランクと使用する部位の吸収率を確認すること
- 副作用の症状を知り、もしもの時に、すぐに対処できるようにすること
- 医師任せではなく、自分で皮膚や薬について勉強すること
まずはステロイドを必要とする症状なのか、その判断ができる医師を探してください。
不安なことを聞きやすい、相談しながら治療してくれる医師も必ずいます。
痒みがひどいと、ついつい使い過ぎる気持ちもわかります。私もそうでした。
でも、多く塗ればいい薬ではありません。
少量を使い続けたり、予防的に使う薬でもありません。
使うタイミングと強さ、量と期間を考えて使わなければいけない薬です。
そうすれば、私のような副作用が防げます。
まとめ|ステロイドとの付き合い方
アトピー性皮膚炎は命に関わるような病気ではありません。
でも、ひどくなれば日常生活に支障がでる病気です。
痒みは痛みと同じぐらい辛いものです。
見た目がコンプレックスになり心にも影響します。
なかなか簡単に治る病気ではないので長期戦になる方もいるでしょう。
その場合、大切な時間を共に生きることになります。
学業、仕事、恋愛、どれも人生において大切な時間ですよね。
アトピー性皮膚炎で悩み、もし諦めることになったら、もったいないと思います。
私は脱ステロイドをやめたあと、快適な暮らしを求めてきました。
もちろん、ステロイドを断ち切り完治するのが一番ベストです。
完治しなくても、アトピー性皮膚炎だけを気にして過ごすのは嫌でした。
少しでも前向きに楽しく生きること、痒みのない生活を送りたい。
ステロイドはその手助けをしてくれました。
ステロイドで症状をコントロールすること、それも1つの選択肢です。
ステロイドは「悪魔のくすり」ではありません。
「ステロイド」をよく知ること、それが怖さをなくす一番の方法です。